初めてルマンに行ったのが1989年、そして今年2009年は12回目の撮影となりました。
ご承知のように今年はついにプジョーが3年目の挑戦でアウディをやぶり優勝を飾りました。アウディもニューマシンR15を3台投入し、優勝を狙ったのですが、残念ながらクラッシュやマシントラブルで1台が3位に入っただけでした。
今回はいつもより多めの写真を時系列でご覧ください。上の写真は水曜日のフリー走行です。ここ数年、なぜか撮影の始まりはここインディアナポリスのアウト側からです。時間は18時過ぎ、そろそろ斜光になってきました。
20時頃から雨が降り出し、夕陽は期待できなかったので、第2シケインの立ち上がりに移動しました。あまり行かないこの場所ですが、雨で暗く、水煙を上げ走るマシンはとても幻想的です。ここではニコンD3に助けられました。ヘッドライトに幻惑されることなくオートフォーカスで追えるのです。今までなかなか撮れなかったものが撮れるということは、カメラマンにとってありがたいことです。
そして、ピットに戻り撮影。2004 年以来の参加となる「Team Goh」今回は「NAVI」とのジョイントでLMP2のポルシェです。当然クラス優勝を狙っています。ドライバーの荒選手、チームのスタッフとも旧知の仲。そして今回の監督、NAVI加藤編集長も長い付き合いの一人。期待しています!
翌木曜日の予選1回目は、ポルシェカーブから。ここは大好きな場所です。時間帯によっていろいろな表情があり、「いつ行くか?」必ず悩む場所です。こんなにまとまってマシンが来るのも珍しいですが、先頭は日本でも活躍するトレルイエ選手が乗っています。
予選2回目は暗くなったフォードシケインのイン側でD3の高感度を生かしての撮影です。今までストロボに頼っていた夜の撮影もずいぶん変わりました。
金曜日は走行はありません。明日から始まる過酷なレースの休息日になるはずですが、ドライバー達は大忙し、市内のパレードが待っています。大勢の観衆に手を振る姿を見ると、いよいよお祭りが始まるという感じです。
そして土曜日の午後3時、スタートは切られました。
フォードシケインのアウト側に行った後はインディアナポリスのイン側からアルナージュへ。時間は午後6時過ぎ、まだスタートから3時間です。
次は第1シケインへ。遅い車に対してブルーフラッグを振るオフィシャル。彼らにもレンズを向けたくなるのもルマンの魅力です。
午後8時、ユーノデュエールを走るマシン達。公道部分は危険なため撮影禁止エリアが多いのですが、ルマンらしい魅力的な場所もたくさんあります。確かにセーフティゾーンもないガードレールの向こう側を300km/h以上で走っているわけですから当然危険かもしれません。そんな中、ここはギリギリOKな場所です。右側の建物は昔は「24時間ホテル」だったところです。古い写真で見た方も多いのではないでしょうか。
フォードシケインに向かっていくマシンを後ろから狙う。シケインとは名ばかりで、ゆるいS字がふたつ続き、飛び込みは速いです。時間は午後9時、夕陽が沈む時間が近づいてきます。
午後9時47分、今年は素晴らしい夕陽になりました。この数分の間、タイミングよく撮りたいマシンと出会えるか、このあたりも運次第です。そしてその時、必ずモノにするために緊張感が高まる瞬間です。
フォードシケインで完全に暗くなるまでねばった後は、深夜のピット作業を撮りに行きます。優勝したプジョー9号車がピットアウトします。ピットではチームスタッフがピリピリしていて、我々カメラマンも周囲の様子をうかがい集中していないと危険です。
午前6時過ぎ。今年は夕陽に続き、朝日まで!何年振りでしょうか。一睡もしていない目にダンロップブリッジから上がる太陽はとても眩しいものでしたが、この短い時間も大切にしなければなりません。
ゴールまであと1時間少し。汚れたマシンは荒選手が乗る「NAVI Team Goh」のポルシェ。この時点でクラス2位でしたが直後の第1シケイン手前でオイルに乗り大クラッシュ。幸い荒選手にケガはありませんでしたが、あと少しのところでリタイアとなりました。完走ならず・・・、残念です。
そして、午後3時、3台のプジョーが隊列を組んでのゴールです。ついに3年目にして宿敵アウディをやぶった瞬間です。
そして、表彰式。3位のアウディのクリステンセン選手が優勝したブラバム選手を笑顔で祝福しているこのシーンに感動しました。お互い激しいライバルなのに終われば相手を褒め称える、レース後のコメントでもアウディドライバー達、アウディ・スポーツ代表のウルリッヒ氏もまずはプジョーを賞賛するところから始まりました。
今年のルマン24時間レース、昨年と較べると展開も地味だったかもしれませんが、レース展開がどうあろうと写真を撮る人間としてたまらない魅力があります。そして必ず後悔があり、その後悔をなくすために、また次の年も行くのではないでしょうか。そんなループに入っているせいか、きっとまた来年も出かけて行くのでしょうね。